口腔がん検査
Oral ID
当院でも口腔がんの光学的スクリーニングキット、「Oral ID」を取り入れました。
日本口腔腫瘍学会の調べによると、日本では口腔がんにかかる人は1975年には2100人でしたが、2005年には6900人、現在では約7000人にまで増加しており、このままの増加率だと10年後には1万人以上が口腔がんにかかると考えられています。
現在、毎年約7000人が口腔がんにかかり、その中で亡くなる方は3000人を越えています。高齢化に伴い、患者は増加の傾向にあり、50歳以上が約8割を占めるとされ、女性より男性に多く見られます。
口腔がんの危険因子
日本以外の先進国では、積極的に口腔がん対策による早期発見、早期治療が行われていることもあり、口腔がんによる死亡率が減少しているのです。
口腔がんの原因としては、喫煙、飲酒、慢性の機械的刺激、食事などの刺激、炎症による口腔粘膜の障害、ウィルス感染、加齢などがあげられます。特に喫煙は口腔がんにおける最大の危険因子と考えられています。
東南アジア諸国では全癌の約30%を口腔がんが占めていますが、これは噛みタバコの習慣によるものが多いと言われています。
飲酒も口腔がんの危険因子で、アルコールそのものには発がん性はありませんが、間接的に発がんに関与されていて、アルコールの代謝産物であるアセトアルデヒトに発がん性があると報告されています。
早期発見・早期治療で変わるがん化の確率
口腔がんは早期発見が非常に大切で、口の中に白い斑点(白板症)があった場合、7から14%の確率でがん化する可能性があり、粘膜のただれや赤い斑点(紅板症)ががん化する確率はなんと50%以上。
早期にがんを発見し、初期段階で治療をすれば5年後の生存率は90から95%で、話す・食べる・飲むといった口の大事な機能も、ほとんど支障はありません。
しかし、進行がんではその確率も約50%に低下し、舌を半分以上切除したり、顔や首などに大きな傷跡が残ったりすることになります。体の他の部位から骨や皮膚などを移植して再建しますが、今まで通りの生活をすることは難しいでしょう。
痛みを伴わない口腔がんを発見するために
口腔がんは目で見て触れることのできる部位に出来るため、他部位のがんと異なり早期発見が可能と思われているかもしれませんが、実際の早期発見の割合は、歯肉では6%、頬粘膜では8%、最も発見されやすい舌でも23%しか発見されていません。
その理由の一つは、口腔がんは痛みを伴わないものが多く、特に早期がんは腫瘍やびらんのような口内炎と区別がつかないものがあります。もう一つは、一般的に口腔がんに対する社会の認識が不十分であることがあげられます。
当院で導入した検査機器、オーラルIDは肉眼で見えない部分のがんや口腔内の病変などを見つけることが可能です。
Oral IDの原理、根拠
オーラルIDは、基底膜まで到達する最も蛍光反応がしやすい波長425nmから460nmの青色光を口腔内に照射し、その蛍光発光の明暗の差によって組織の異形成の有無を観察することができます。
正常な組織は緑色に蛍光発光するのに対して、がんや異形成(前癌組織)などの異常がある組織は、この光を吸収してしまうため暗色として見えます。
がんや異形成(前癌組織)においては、代謝活動の増加・活性化がもたらされたり、内側に潜んでいる結合組織の構造が変わってしまい、蛍光発光の減少、消失をもたらします。以上がオーラルIDの原理、根拠となります。
光を患部に当てるだけなので簡単にスクリーニングできますが、確定診断にはなりませんので、異常が見られた場合には専門医療機関に御紹介し、生検を行ってもらうようになります。
【引用】
- 「最新がん統計」国立がん研究センターがん対策情報センター
- 「科学的根拠に基づく 口腔がん診療ガイドライン 2009 年版」
日本口腔腫瘍学会・日本口腔外科学会編 - 江戸川区歯科医師会ホームページ